2015年に採択されたSDGs。
2030年までの目標達成に向けて、いよいよ折り返し地点となりましたね。国連に加盟している193カ国では持続可能な社会の実現に向け、期限までの目標の達成が急務とされています。
そのような状況のなかで、今注目を集めているのが「エシカル」。
持続可能な社会を実現するために「社会や環境に配慮する」という考え方が国際的に重要視されているというわけです。
今回の記事では、世界的に注目を集めているエシカルを軸とし、これらについて分かりやすく解説していきます。
- エシカルとは何か
- エシカル、SDGs、サステナブルの違い
- なぜエシカル消費が必要なのか
- 気軽にエシカル消費に参加する方法
ぜひこれを機に、エシカルな考え方について一緒に学んでいきましょう。
エシカル・エシカル消費とは
そもそも、エシカルとは何を指すのでしょうか。
エシカル
「Ethical=倫理的な」という意味の英単語です。現代においてこの言葉は「社会や環境に対して配慮する」という解釈で使われています。
またこれに付随して、「エシカル消費」と言う言葉があります。
エシカル消費
ユーザー自身が社会や環境をはじめ、周りの人にも配慮すること、そしてそれらの解決に取り組む企業の商品を購入するなどして消費活動を行うことを指します。
エシカルを行動に移す際に、真っ先に考えられるのが「消費」です。普段の買い物に気をつけることから、本当の意味でのエシカルが始まるという発想ですね。
※どのような商品を購入するのがエシカル消費につながるのか。後述の「エシカル消費に参加する方法6選」で解説しています。
このように一人ひとりがエシカル消費に参加することで、SDGsの目標のひとつである「つくる責任つかう責任」の達成に一歩近づくことができます。
エシカル・サステナブル・SDGsの違い
また、エシカル、サステナブル、SDGsの違いについて見ていきましょう。
- エシカル「Ethical=倫理的な」
社会や環境に対して配慮した倫理的な「考え方」をエシカルと言います。 - サステナブル「Sustainable=持続可能な」
持続可能な社会という「理念」を指す言葉をサステナブルと言います。 - SDGs「Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標」
サステナブルな社会の実現に向けて、2015年9月に国連サミットにて採択された「目標」をSDGsと言います。
どの言葉も環境問題を解決するための要となるワードではありますが、それぞれ異なる意味を持っています。
「エシカルな考え方」、「サステナブルという理念」、「SDGsという目標」の3点を念頭に置いて、環境に優しい取り組みを個人単位でも行っていくことが非常に大切です。
エシカル消費は「エいきょうを シっかり カんがえル」が合言葉!
あなたは買い物をする時に、何を一番大切なポイントとして商品を選んでいますか?
エシカル消費をする上では、「この商品を購入することで、どこにどのような影響を与えるのか」を考えて購入することがとても重要になってきます。
一般社団法人エシカル協会では、「エいきょうを シっかり カんがえル(影響をしっかり考える)」を合言葉に、エシカル消費の浸透を促しています。
身近な商品から考える社会問題
エシカル消費が求められるようになった背景には、様々な社会問題が起きていることにあります。
これらからご紹介する世界的な問題を知ることで、より一層、エシカル消費の重要性を感じることができると思います。
格安ファストファッションが世に溢れている理由
みなさんはファストファッションを購入したことはありますか?
最近では若い女性を中心に、1着500円以下で購入できるような格安通販サイトが大流行しており、SNSや動画でも注目を集めていますよね。
もちろん実店舗でも1着1,000円程度で購入できるショップも多数あり、ハイブランドよりも買い換えやすいファストファッションが主流になりつつあります。
しかし何故このような安さで商品を購入できるのでしょうか。
それは、賃金の低い発展途上国で大量生産することで、生産コストを最低限に抑えているからです。
それが国に見合った賃金なのであれば問題にはならないかもしれませんが、もちろん違法に働かされているケースもなかにはあり、現場のスタッフは、低賃金なだけではなく、不衛生な職場で重労働を強いられている場合も少なくありません。
加えてそのような発展途上国では、転職できる保証がないため、明日を生きていくためにこのような劣悪な環境に耐え続けるしかありません。
ユーザー目線としては、安くて可愛い流行の服を購入したいという気持ちもわかりますが、その服自体は1クールで手放してしまうことも多いことと思います。
その一方で、世界ではファストファッションによって人権が脅かされている人がたくさん居ます。そのことも考えた上で慎重に服選びをすることが大切なのではないでしょうか。
児童労働で成り立つ産業
またこのような就労環境では、子どもが働いてるケースも多くあります。
- 児童労働とは
法律で定められた年齢を下回る児童が働くことを児童労働と言います。
児童労働は、子どもの心身の成長や、勉強の機会を妨げないために禁止されていますが、これらの項目に該当しない場合は児童労働とは判断されません。 - 児童労働の現状
世界の児童労働者数は、実に1億5,200万人にも昇ると言われています。これは、世界の子どもの10人に1人という高い割合を指す数値です。
児童労働は日本ではあまり聞きませんが、主に、アフリカや南アメリカ、アジア太平洋などで問題となっており、ほとんどの子どもたちは、コーヒーやカカオの生産といった農林水産業で働かされているのが実情です。
つまり、世界では多くの子どもたちが、劣悪な環境でまともに教育も受けられずに、低賃金で働いているというわけです。
児童労働の打開策
そんな状況を打開しようと世界では様々な対策が講じられています。
国際労働機関
国際労働機関では児童労働を撲滅するために、世界を先導して解決策を講じています。この機関では、良質な教育を子どもたちに提供することで、十分な知識や技能を身につけさせ、大人になった時に収入をUPさせることで、暮らしを豊かにすることを狙っています。
そのような子どもたちを増やすことで、最終的には国自体も豊かになり好循環が生まれることでしょう。
フィリピン
フィリピンでは、大統領の掲げる政策にも児童の保護が含まれているほど、児童労働が問題視されています。
小学校では、働くための実用的なスキルを身に付ける教育も行われており、親も積極的に子どもを学校に通わせるような環境が生まれました。
加えてフィリピンでは社会保障制度が非常に充実しており、貧困であっても無償で大学に通える制度も導入され、本人の意欲次第で学びを深めることができます。
ガーナ
ガーナ政府は児童労働を撲滅するために「児童労働フリーゾーン制度」といった制度を導入しています。
この制度では、児童労働問題が改善している地域を児童労働フリーゾーンとして定義する他、「学校の出席率のシステム管理」や「危険労働の監視」など行い、子どもたちの権利を保証する取り組みを実施しています。
またこれらに反した場合は、法律に乗っ取り制裁を行うシステムも構築されています。
このように児童労働が問題となっている国でも、打開策が講じられており子どもの人権を守ろうとする動きが活発になってきています。
エシカル消費に参加する方法6選
世界では深刻な社会問題が起きていることをご紹介してきましたが、これらを改善するために我々は具体的にどのようなアクションを起こせば良いのでしょうか。
早速、今日からでも参加できるエシカル消費をご紹介していきます。
フェアトレード商品を選ぶ
フェアトレード商品とは、途上国の生産者たちの生活改善や自立を目的とし、その国の原料や商品を適切な価格で購入する公正な取引を経て作られた商品のことを指します。
【商品例】
チョコレート、コーヒー、花など
なぜフェアトレード商品の購入がエシカル消費につながるのか。
フェアトレードでは「実際に公正な取引が実施されているか」「児童労働させていないか」などの基準が設けられており、商品が完成するまでの各工程において、関係する組織を定期的に監査し、ルールが遵守されているかを確認しています。
そのためそのような適正な取引が行われている商品を購入することは、クリーンな商品であるという証拠となるため、エシカル消費と言えるのです。
オーガニックにこだわる
オーガニック商品とは、農薬や化学肥料といった化学物質に頼らずに、環境に優しい有機栽培によって生産されたうえで、オーガニック認証を受けているものをオーガニック食品と言います。
【商品例】
米、野菜、お茶など
なぜ、これらの商品を購入することがエシカル消費につながるのでしょうか。
- 土・生物・植物を守ることができるから
農薬を使用することで本来であれば土の中にいるはずの生物が死んでしまうことがあります。
それらの生物がいなくなることによって植物も十分に栄養が補給できなくなり、農薬や肥料に頼らざるを得ないサイクルができあがります。
つまり、オーガニック商品を選択することで、生物や土、植物を守れるというわけです。 - 人間の健康を守ることができるから
化学物質を摂取することによって、人体に影響を与える可能性があるかもしれないとも言われています。
どれだけ悪影響を与えるかについては判明していない点も多いですが、オーガニック食品を選択することで、悪影響になりうる原因を取り除くことができ、人間の健康を守ることに繋がります。
地産地消を意識する
地産地消とは、地元で生産された農産物を地元の住人が消費することを地産地消と言います。
【商品例】
野菜、米、果物など
地産地消を行えば、トラックや船といった輸送にかかるエネルギー量を抑えることができます。さらに地元の商品を消費することで地域活性化にも繋がるというわけです。
伝統工芸品を長く大切に使う
職人に手で丁寧に作られた商品を長く大切に使うことも、エシカル消費と言えるでしょう。
下の5つの項目を全て満たし、法律に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことを言い、現在は237品目(2022年3月18日時点)にも及びます。
- 主として日常生活の用に供されるもの
- その製造過程の主要部分が手工業的
- 伝統的な技術又は技法により製造されるもの
- 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
- 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの
【商品例】
輪島塗、津軽びいどろ、江戸切子など
古くから伝わる伝統工芸品は、手作業の工程が多いことから、製造時にかかる消費エネルギーが非常に少なくすみます。
このように環境に優しい商品を購入することで、エシカル消費につながるのです。
寄付付き商品を購入する
寄付付き商品とは、文字通り、購入が寄付につながる商品のこと。
商品の売上の一部が、環境保全や、災害復旧、社会的貢献などに寄付される商品を寄付付き商品と言います。
【商品例】
年賀状、自動販売機での購入、チョコレートなど
購入者は、寄付付き商品を購入するだけで社会に貢献することができるため、こちらもエシカル消費と言えるでしょう。
障害者支援に繋がる製品を購入する
障がい者を中心として生産されている商品を就労支援商品と言います。
【商品例】
パン、クッキー、手芸品など
障がい者は雇用機会が少ない上に、非正規雇用や低賃金が蔓延していることが問題視されています。
このような状況の中で、就労支援商品を購入することで雇用の活性化と、障がい者の社会参画につながり、エシカル消費を達成できます。
エシカルを判断する認証マーク12選
有機JASマーク
「有機農産物」「有機畜産物」「有機加工食品」「有機飼料」の4分野において、付与されるのが有機JASマーク。
化学合成肥料遺伝子組み替えの使用禁止などが条件となっており、第三者機関が厳しい資産基準のもと精査して付与することで、商品に「有機」と表示することができるようになります。
【商品例】
醤油、ケチャップ、ごまなど
USDAオーガニック認証
「United States Department of Agriculture=アメリカ農務省」によるアメリカのオーガニック認証制度で、非常に厳しい基準が設けられていることが特徴です。
製品の安全性だけではなく、環境に配慮して生産されているかどうかも審査対象になります。
【商品例】
畜産物、農産物、アルコールなど
MSC認証
基準に沿った漁業によって獲得された水産物に対する証を「MSC認証」と言います。
この制度は、持続可能な水産資源を残す目的で運営されており、このマークのある水産物を選ぶことで、持続可能な漁業を応援することができます。
【商品例】
明太子おにぎり、フィッシュバーガー、ツナフレークなど
RSPO
「Roundtable on Sustainable Palm Oil=持続可能なパーム油のための円卓会議」と言います。食品だけでなく、洗剤や化粧品などに対しても幅広く使われているパーム油の持続可能な市場へと変革する目的で誕生しました。
RSPOは、このように正しく管理されたパーム油で生産された商品に与えられる認証マークです。
【商品例】
カップラーメン・食器用洗剤・バター風調味料
GRS認証
まず前提として、製品の原材料に含まれるリサイクル成分が50%を超えている必要があります。加えて、現場での管理状況や化学物質の選定基準についても検証した上で、全てをクリアした製品に与えられる認証です。
【商品例】
アウター、おむつ、寝袋
OCS
原料の収穫から製品ができるまでの全ての過程において、不純物が入らないように管理し、オーガニック繊維で作られていることを保証する認証マークです。
【商品例】
繊維品全般
GOTS
原料の収穫から製品ができるまでの全ての過程において、不純物が入らないように管理し、結果的に原料の70%以上がオーガニック繊維であることが示された商品に与えられる認証マークです。加えて、環境や社会などにも配慮されている必要があり、複数の項目をクリアする必要があります。
【商品例】
繊維品全般
FSC認証
環境や社会に配慮した上で、正しく管理された森林の製品を分かる形でユーザーに提供し、その利益を生産者に還元する仕組みを言います。
【商品例】
木材製品、紙、パルプなど
国際フェアトレード認証ラベル
途上国の生産者たちの生活改善や自立を目的とし、その国の原料や商品を適切な価格で購入する公平な貿易体制を「フェアトレード」と呼びますが、このフェアトレードを証明する制度が「国際フェアトレード認証」です。
商品が完成するまでの各工程において、関係する組織を定期的に監査し、基準が遵守されているかを確認します。
【商品例】
コーヒー、コットン製品、はちみつなど
WFTO
生産者の労働環境などに関する基準を満たしていることを認められたフェアトレード団体を認証するマークです。
レインフォレスト・アライアンス
持続可能な農業を推進するために、社会経済環境をもとにした認証プログラムを「レインフォレストアライアンス認証」と言います。
この認証は、生産者の人権保護、また森林生物多様性の保全が一定程度保たれていることを約束し、このマークのある商品を選ぶことで、持続可能な農業の実現に貢献することができます。
【商品例】
チョコレート、バナナ、紅茶など
ASC認証
「MSC認証」を養殖業に置き換えた制度が「ASC認証」です。
このマークがある商品を購入することで、持続可能な養殖業を応援することができます。
【商品例】
ブリ、タイ、二枚貝など
このように、身近な食材や調味料にも、エシカルを判断する認証マークが付いている場合があります。
意識的にこれらの商品を購入することでエシカル消費に繋がりますので、スーパーなどで是非注目してみてください。
エシカルに関する先進事例
エシカルに関しては企業も積極的な取り組みを見せています。ユーザーも関わることができるエシカル消費の一例をご紹介していきます。
エシカルファッション
環境問題や労働環境に配慮し、生産された衣服をエシカルファッションと言います。
アディダスやパタゴニアといった有名企業でもエシカルファッションに着目した取り組みが行われています。
1.アディタス
- リサイクルポリエステルへの転換
- 環境に配慮した素材の利用
- 製造時の二酸化炭素の排出量を抑える
- 海洋プラスチックの廃棄物を活用したシューズの製造 など
2.パタゴニア
- オーガニックコットンの利用
- フェアトレードへの参加
- 移民労働者の受け入れ
- 生活賃金の保証 など
エシカルフード
環境問題や労働環境に配慮し、生産された食品をエシカルフードと言います。
スターバックスやイオンなどユーザーにも身近な店舗でエシカルフードが取り扱われていますので、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
1.スターバックス
- 国際フェアトレード認証のコーヒーを世界で最も多く購買
- 「毎月20日=エシカルなコーヒーの日」と位置付け、店舗ごとにプログラムを実施
- コーヒーを持続可能な方法で調達するガイドラインを作成 など
2.イオン
- フェアトレードやオーガニックのコーヒー、チョコレートの製造、販売
- 「MSC認証」、「ASC認証」をはじめとした持続可能な水産物の販売 など
身近なエシカル消費から始めよう!
今回はエシカルを軸に、私たちユーザーがどのような形でエシカル消費に参加できるかをご紹介しました。
世界的な社会問題として、ファストファッションが広まっている背景や児童労働の問題点についてご紹介しましたが、その他にも地球温暖化や海洋プラスチック、動物虐待など課題はまだまだ山積みです。
海外から見ても日本は平和な国であることから、当事者意識を持つ人が少ないと言われています。この記事を読んで、少しでも意識的にエシカル消費を実践しませんか?
あなたの小さな行動がいつか積み重なることで、より良い未来が待っていることでしょう。