2022.07.01
環境を考える

無限のエネルギーとしての太陽光活用

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近年再生可能エネルギーが注目されていますが、その中でも多くの生産量を誇るのが、太陽エネルギーを活用した太陽光発電です。

地球に降り注ぐ太陽エネルギーは、1秒間という短時間で世界中で使われている石油や電気などのエネルギーの2万倍以上になると言われるほどの強いエネルギーを持っています。
そんな太陽エネルギーの活用は世界各国で進んでおり、特に日本は太陽光発電の蓄積導入量は第3位。
実は日本は、世界でも積極的に太陽光発電を導入している国なのです。

この記事では、再生可能エネルギーの中でも多くのエネルギーを持つ注目の太陽エネルギーについて、注目される理由や私たちとの関わりなどを紹介していきます。

もっとも強力な再生可能エネルギーである太陽光

もしも降り注ぐ太陽光すべてを、人間が使えるエネルギーに変換できるとすれば、1時間もあれば世界の年間のエネルギー消費量を賄うことができ、たちまち世界のエネルギー問題は解決してしまうでしょう。それだけ太陽光というのは、ものすごい大きなエネルギーを持っているのです。

もう1つの大きな特徴は、太陽光はなくならないということ。

私たちはエネルギーを得るために、多くの化石燃料を使用しています。
これら化石燃料というのは長い年月をかけてじっくり作られてきたもので、短時間ですぐにできるものではありません。
そのため、このままのペースで使用するとなくなってしまう可能性が指摘されています。
一説によれば、50年後には使用できなくなるのではないか、という意見もあるほど。
もし化石燃料がなくなってしまったら、火力発電をはじめとして今得られているエネルギーの多くがなくなってしまう危険性を孕んでいるのです。

しかし太陽光をはじめとした再生可能エネルギーは、資源が枯渇することはありません。

化石燃料の採掘において自然環境を壊してしまう、輸送時のトラブルで海に重油が漏れ出してしまうといった心配もないため、安心して使うことができるのです。

太陽光エネルギーと人類の歴史

実際に、私たちは今どのくらい太陽光を利用できているでしょうか。

現在日本で発電されているエネルギーの内、太陽光発電の発電量は、約170TW(170×10の12乗W)ほどと言われています。

例えば、家庭で1時間エアコンをつけていた場合、多い時で3,700Wの電力を使用することになります。24時間365日使うと3,000万Wほどを消費することになりますが、それでも太陽光発電の年間発電量と比べると1%にも及びません。

現在日本で発電されているエネルギーの内、太陽光発電が占める割合は全体の約2%ほどですが、それでも、太陽光で発電される電気を1人の人間で使い切ろうとするには、一生かかっても無理なほど、膨大なエネルギーを得ることができているのです。

そして、私たち人類はこの膨大な太陽光のエネルギーを様々な形でこれまでも利用し続けてきました。

太陽光の利用方法①:照明

電気がない時代まで遡ると、太陽光は室内外の照明にもなっていました。

朝は太陽光が部屋に入ってくることで自然と目が覚め、日中は太陽光をもとに作業するなど、太陽光がないと人間の活動自体がままならなかった時代もあります。

現在は電気があるので照明として太陽光を認識することはあまりないかもしれませんが、日当たりが良ければ電気いらずなほど。
今も昔も、室内外の照明としての用途は変わらずにずっと続いています。

太陽光の利用方法②:農業

農業においても太陽光は欠かすことのできない存在です。

みなさんもご存じのように光合成を行うことで植物は育っていきます。光合成とはご存知の通り、太陽光を浴びることで二酸化炭素と水から糖類を合成して余った酸素を空気中に排出すること。
つまり、太陽のエネルギーから自分の栄養素を作り出すことができるのが植物ということになります。

私たち人間は、いくら太陽を浴びてもお腹がいっぱいになることはありません。
しかし植物は太陽光を浴びて成長し、また人間に不可欠な酸素も吐き出してくれているのです。

太陽光がいかに私たちの生活に密接に関わっているのかがわかりますね。

太陽光の利用方法③:熱

火力発電では熱を利用して発電するように、「熱」というエネルギーへの変換効率は40〜60%と言われるほど、高効率でエネルギーを利用することが可能です。

そしてもちろん太陽の熱も空気や水を温めることでエネルギーとして利用することができます。
家庭では、「太陽熱利用」という方法で、給湯や暖房などに使用されることが多いです。
太陽を熱源に利用する際には、燃料や電力もほとんど必要としないため、光熱費の削減という観点だけでなく環境への配慮といった観点からも、安心して使うことのできるエネルギーです。

太陽光の利用方法④:発電

太陽光発電には「太陽光発電」「太陽熱発電」の2種類の発電方法があります。

  • 太陽光発電…太陽の光をエネルギーとして電気へと変換して利用
  • 太陽熱発電…太陽光の熱をエネルギーとして水や空気を温めることで利用

同じ太陽光を利用した発電方法ですが、設置場所や気候によって使い分けがされています。

太陽光発電は日差しが何よりも大切なため、周りに日差しを遮るものがない平らな土地に太陽光パネルを設置することが大切です。

太陽熱発電は、直射日光が強い土地が適しており、太陽光発電よりも広大な土地に太陽炉という装置を設置することが望ましいです。
太陽熱発電は、蓄熱の効果を利用して、日中に蓄えたエネルギーで夜間や雨天時にも発電することができるのも特徴です。

気候や求められる使い方によってどちらを選ぶべきかは変わってきます。

太陽電池とソーラーパネルで行う太陽光発電

太陽光発電について、詳しく見ていきましょう。

家庭の屋根にソーラーパネルが設置されていたり、ソーラーパネルが何枚も立ち並ぶ土地を見たことがあると思います。
みなさんが見るソーラーパネルは大きな1枚の板のように見えますが、これらは太陽電池がたくさん集まって、ひとまとまりのパネルとして稼働しています。

太陽電池の仕組み
太陽電池は主にシリコンなどの半導体でできています。
プラスを帯びやすい半導体と、マイナスを帯びやすい半導体を2枚貼り合わせた状態に太陽光が当たると、それぞれにプラス極とマイナス極が形成され、導線を伝わって移動することで電気の流れが生じます。
これが太陽光で電気を発生させる仕組みです。

また、ソーラーパネルにも種類がありエネルギーの変換効率やコストも変わってきます。

大きく分けると「シリコン系」「化合物系」「有機系」の3つの種類に分かれますが、住宅用に最も多く使われているのがシリコン系、そして化合物系です。

ここでは代表的な4つのソーラーパネルについてご紹介します。

名称 特徴 変換効率
単結晶シリコン
  • シリコン結晶が規則正しく並んでおり、発電のロスが少ない
  • 製造コストが高い
20%前後
多結晶シリコン
  • 結晶が不規則に並んでいるため、発電量が低くなる
  • 単結晶よりもコストが安い
15%前後
薄膜シリコン
  • 薄いため、折り曲げられる
  • 屋根や、壁にも取り付けることができる
10%前後
化合物系(CIS系)
  • 原料は銅・インジウム・セレン
  • シリコン系に比べると低コストでの製造が可能
15%前後

太陽光発電の発電量

では、太陽光発電の発電量はどの程度になるのでしょうか。
家庭で使えるソーラーパネルと産業用で使えるソーラーパネルでは発電能力の規定があるので一概に言えないですが、ここでは産業用のソーラーパネルを使った場合の太陽光発電の量を見ていきましょう。

産業用のソーラーパネルをテニスコートと同じ広さの約60坪に設置したとすると、年間でおよそ20,000kWhの発電量を見込めます。
環境省の2017年のデータによると、世帯あたりの1年間の平均電力使用量は約4,300kWhと言われていますので、テニスコートの広さで太陽光発電を行うと、ざっと4世帯分の年間の電力使用量を賄うことができるという計算になります。

家庭用の太陽光発電の場合は、発電能力が10kWh未満という規定が決められていますが、1枚あたりの発電能力が高いソーラーパネルと屋根の広さが十分であれば、1年間の電力を賄うことも可能なのです。

もちろん、ソーラーパネルの性能や日照時間によって発電量は変わるので一概には言えませんが、太陽光発電で得られる電力量は、家庭の電力を賄うだけであれば十分すぎるほどなのです。

太陽光発電のメリット・デメリット

これまで太陽光発電のメリットばかり見てきましたが、改めて太陽光発電の良いところ、そしてここは良くないというデメリットを見ていきましょう。

太陽光発電のメリット

これまでも紹介してきましたが、太陽光というなくなることのないエネルギー源で発電できる点はとても大きいでしょう。

そして、他の発電方法と違って発電するために資源を燃やしたり、輸送の際のトラブルで環境に影響を及ぼすことがないなど、環境に優しい点は今後私たちが継続的に電力を使用していく上ではとても重要なポイントです。

太陽光発電のデメリット

太陽光発電は、日照量によって大きく影響されます。特に梅雨の時期や曇りや雪が多い地域では、1日や1ヶ月単位で見ても発電量が一定ではないことも多いでしょう。

また産業用の太陽光発電の場合は、広い土地や送電線が近くに立っている必要があるなど、設置場所の条件をクリアしなければいけないデメリットもあります。

発電量が一定しないというデメリットを解決するためにも、現在太陽光発電と一緒に熱回収を行えるシステムの開発が進められています。
太陽エネルギーの65%を電気と熱に変換することのできるこのシステムが実現すれば、家庭用だけでなく商業用の施設にも活用が行える可能性もあり、注目が集まっています。

太陽光発電に適した地域って?

日照時間や設置場所によって発電量が大きく左右される太陽光発電。
設置する際に気をつけたいポイントは4つです。

日照時間が長く、気温の安定した地域

太陽光をエネルギー源とするので日照時間は重要な指標になってきますが、気温にも注目が必要です。
南の地域の方が1年中温暖で太陽光発電に適しているというイメージがあるかもしれませんが、実は那覇と札幌を比べると、年間の発電量に大きな差は見られません。

その原因は、気温の上昇によりソーラーパネルが熱くなりすぎて、変換効率が下がってしまうことです。そのため那覇の発電量が下がり、札幌といった北の地域でも同等の発電量になるのです。
また雨の影響を受けにくい北海道は年間を通して比較的安定した発電をすることができるのも関係しています。

その土地によって天候の特色があるため、設置場所に適したソーラーパネルを選んだり設置する角度を変えるなどの工夫をして、発電量の最大量を上げていきましょう。

影のないエリア

ソーラーパネル全体に、木々や建物の影ができなければ問題ないと思ってしまいがちですが、実はソーラーパネルの種類によっては、たった一部に影ができるだけで、パネルの大部分で発電量が下がってしまうというケースもあります。

また一度設置すると、なかなか設置場所に訪れることも少なくなるかと思いますが、雑草や周りの樹木が成長して、いつの間にか影ができていたということも。
定期的な点検・対策も忘れずに行いましょう。

設置できる広さ

太陽光発電を行うソーラーパネルは、たくさん設置すればするほど発電量も多くなります。

ただし土地いっぱいにパネルを敷き詰めてしまうと影ができてしまったり雑草の影響を受けたりしてしまうので、適切な距離を開けて設置する必要があります。

10kWのパネル容量で100〜150㎡、50kWのパネル容量で500〜750㎡の土地面積が必要とされていますので、参考にしてください。

設置する向きと角度

太陽光発電をより効率よく稼働させたければ、太陽光を直角に受けられる角度にソーラーパネルを設置することが大切です。
とはいえ、太陽の位置は時間や季節によって異なってくるので、厳密に言えば最適な角度は毎分変わってくることになります。

常に角度を変えられるソーラーパネルも市販のものでありますが、初期費用やメンテナンス費用がかさんでしまいます。そのため、年間を通して多くの光を受けられる角度と向きで設置することが重要になってきます。

一般的に言われているのは真南で30度の角度で設置する方法です。

しかしこれはすべての地域で適している訳ではありません。
例えば日照時間が多くなる夏の時期に雨天が多い地域の場合、夏に太陽光を直角に受けられる角度に設置するのではなく、他の時期で日照時間が一番多い時期の太陽の位置と照らし合わせて角度を決める、といった調整も必要になってきます。

世界に目を向けてみる? 海外で太陽光発電を
太陽光発電ができるのは、国内だけとは限りません。日本国内では、どんなに日照時間が長い県でも年間で2400時間と言われていますが、世界に目を向けてみると、日照時間が4000時間近くある地域は少なくありませんから、こういった地域にソーラーパネルを設置する、というのもひとつの方法です。
例えば日照時間だけで言えばサハラ砂漠は年間の日照時間が4000時間を超えており、太陽光発電所を建設する場合はかなりの発電量を見込むことができそうです。
設備の輸送の問題や送電の問題で実現には至っていませんが、日本よりも日照時間が長く広大な国土をもつ国々をはじめとして、今後世界中で太陽光発電の需要はどんどん高まっていくでしょう。

まとめ:太陽光エネルギーを高効率で活用するために

再生可能エネルギーのなかでも膨大なエネルギーをもつ太陽エネルギーは、大昔から現在、そして未来に向けても重要なエネルギーである、ということを紹介させていただきました。

今後さらに太陽エネルギーの活用を増やしていくにあたり、太陽エネルギーを高効率で活用できるようにしていくこと、そしてエネルギーを蓄えられる技術を開発していくことがとても重要になってきます。

現在主に使っているエネルギー資源の枯渇に警鐘が鳴らされている今、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーを高効率に活用していけるかどうかに地球の未来がかかっているのではないでしょうか。

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