今、話題になっている再生可能エネルギー。再生可能エネルギーには、太陽光発電や風力発電、水力発電など様々な種類があり、それぞれ特性、方法、発電効率は異なります。
再生可能エネルギーはエネルギー源が枯渇せず、環境負荷が低いのが特徴ですが、使い勝手や発電効率がネックとなり、普及に時間がかかっているのも事実です。
そこで本記事では、再生可能エネルギーの効率や種類別の発電効率、また再生可能エネルギーの発電効率が向上しにくい理由について考えていきます。
再生可能エネルギーの発電効率とは
そもそも、発電効率とはなんでしょうか。
言葉の意味はなんとなくわかるけど、正しく説明するとなると、難しい部分がありますよね。
再生可能エネルギーにおける発電効率とは、「再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換する際の割合」を指します。
例えば再生可能エネルギーが10あっても、途中にロスや消費などがあるため、そのすべてが電気エネルギーに変わるわけではないのです。
10のうち、いくらかが電気エネルギーに変わるのですが、その割合が大きければ大きいほど、経済的にも、環境的にも、効率の良い方法であると言えます。
原子力発電でも太陽光発電でも、作られたエネルギーから変換されたいくらかの電気エネルギーを、私たちは日々使っているのです。
再生可能エネルギーの種類別の発電効率 その1
では、様々な再生可能エネルギーがあるなかで、発電方法と発電効率はそれぞれどのようになっているのでしょうか。
表にしてみました。
名称 | 発電方法 | 発電効率(変換割合) |
太陽光発電 | シリコン半導体に光が当たることで発生する電気を利用し、 太陽光のエネルギーを太陽電池で直接、電気エネルギーに変換する |
約20〜40%程度 |
風力発電 | 風のエネルギーを電気エネルギーに変換する | 約20〜40%程度 |
バイオマス発電 | 生物資源を直接燃焼したり、 ガス化することで電気エネルギーに変換する |
約20%程度 |
水力発電 | 水が持つ位置エネルギーを使用して発電する | 約80%程度 |
地熱発電 | 地熱流体の温度が低くて蒸気が作られない際に、 地熱流体で沸点の低い媒体で加熱し、 媒体蒸気でタービンを回して発電する |
約10〜20%程度 |
いかがでしょうか。
また再生可能エネルギーは、環境・状況によって発電効率が大きく左右されます。
そこで次に、発電効率が変化する理由をみていきましょう。
太陽光発電の発電効率が変動する理由
- 天候に左右される
太陽光パネルに雪が積もっているとき、もしくは気温が25℃を超えるときは変換効率が下がってしまいます。
また暑さに弱いとされており、気温の上がる夏場になると、出力が従来の0.5%も下がると言われています。 - 設置場所
太陽光をエネルギーにしているため、太陽光が当たりにくければ当たりにくいほど発電効率が低下してしまいます。
そのため、建物の南側に向くように設置するのが発電効率を上げるための簡単な対処方法になります。
風力発電の発電効率が変動する理由
- 風量に左右される
一定以上の風が常に吹き続けてくれるような理想的な設置場所があれば、発電効率は変動しません。
しかしそのような場所はなかなかないため、風が弱い日は発電量が下がってしまいますし、まったく風が吹かない場合は、発電自体が行われません。
かといって風が強すぎる場所に設置してしまうと、風力に耐えきれず土台ごと壊れてしまい、重大な事故に繋がる可能性も。
条件に合った最適な設置場所を見つけ出す必要があります。
バイオマス発電の発電効率が変動する理由
- 燃料の水分量に左右される
一般的なバイオマス燃料の水分割合は40〜50%程度と言われていますが、この水分量の割合が高ければ高いほど、発電効率が低下してしまいます。
そのため、まずはバイオマス燃料をできる限り乾燥させ、水分の割合を小さくする必要があります。
水力発電の発電効率が変動する理由
- 降水量に左右される
水力発電は再生可能エネルギーのなかでは、もっとも発電効率が良い発電方法と言われています。
しかし長期間、雨が降らない日が続いた場合、水の供給量が不足してしまい、そもそもの発電自体が止まってしまう可能性があります。
昨今では、地球温暖化の影響で梅雨でも晴れの日が続くといった気候変動も起きているため、この点を留意する必要が出てきています。
地熱発電の発電効率が変動する理由
- 発電効率の変動自体は少ない。しかし、元の変換効率自体が悪い
地熱発電の発電効率自体はあまり変動しません。
しかし、そもそもの変換効率が約10〜20%程度と、ほかの再生可能エネルギーと比較してとても低いことが伺えます。
さらにデメリットとして、開発期間が長期化してしまう点や、コストが高い点、また候補地が温泉施設などと重なるため、普及自体があまり進んでいないのが実情です。
再生可能エネルギーの種類別の発電効率 その2
では次に家庭や工場といった場所を限定して使われることが多い、「利用」と付く再生可能エネルギーの発電方法、発電効率についてみていきましょう。
名称 | 発電方法 | 発電効率(変換割合) |
太陽熱利用 | 屋根や屋上、外壁などへ太陽集熱器を設置。 太陽の熱で空気や水の温度を上げることによって 暖房用や給湯用に利用する |
約40~60%程度 |
氷雪熱利用 | 冬期に降り積もった雪や、冷たい外気により凍結した氷などを、 冷熱を必要とする季節まで保管し、冷熱源として利用 |
– |
温度差熱利用 (ヒートポンプ) |
地下水、河川水、下水などの水源が熱源。 夏場は水温の方が温度が低く、 冬場は水温の方が温度が高い特徴を利用 |
– |
地中熱利用 | 年間を通して温度が一定の地中を利用。 夏は外気より温度の低い地中に熱を放熱し、 冬は外気より温度の高い地中から熱を採熱する |
約10~25%程度 |
太陽熱利用の発電効率が変動する理由
- 天候に左右される
直射日光の強い広大な土地での発電が最も適しているため、太陽熱を吸収しにくい場所では発電効率が下がってしまいます。 - 装置の構造によっても違いがある
太陽熱発電では「トラフ・パラボラ型」、「リニア・フレネル型」、「タワー型」、「ディッシュ型」といった4種類の構造に分けることができます。
それぞれの型に特徴があり、これらの構造によって発電しやすいものとしにくいものがあります。
氷雪熱利用の効率が変動する理由
- 天候や気温に左右される
雪の降らない温暖な地域ではそもそも活用できず、利用可能な地域が限られています。
地球温暖化の影響で暖冬が続き、積雪量が減少すれば、自ずと活用自体が難しくなります。
温度差熱利用の効率が変動する理由
- 変換効率に差はあまりない。しかし……
温度差を利用した発電方法は、活用の幅がとても広いエネルギーとも言われていますが、温度差がなければそもそも発電自体できなくなってしまいます。
地中熱利用の効率が変動する理由
- 利用方法や設置地域に影響される
熱交換量が多い場合、また隣との境界に地中熱交換井戸などを設置した場合には、熱交換効率が低下する可能性があるとされています。
なぜ、発電効率は100%にならないの?
ここまで読んで、「発電効率を100%にすることはできないのか」と思った方もいると思います。
結論から言うとこれは不可能と言われており、エネルギーが形態を変える際には、ロスや他の種類のエネルギーへの変換がどうしても生じてしまいます。
そのため、いくら人類の科学技術が発達したとしても、特定のエネルギーを異なったエネルギーへすべて変換することはできないようえす。
例えば、白熱電球とLED電球のエネルギー変換を比較してみるとどうでしょう。
白熱電球は触るととても熱くなっていますが、LED電球は触ってもほとんど熱くなりませんよね。
これは白熱電球は、電気エネルギーを変換する際に、熱エネルギーとして余計にエネルギーをロスしているからです。
しかし、LED電球の場合はそのロスが少ないため、熱くなりにくいのです。
そのため、ワット数が小さかったとしても白熱電球より明るくなります。
まとめ:発電効率を高めることが今後の課題
様々な再生可能エネルギーの発電方法や種類別の発電効率、発電効率が下がってしまう理由についてご紹介しました。
再生可能エネルギーの変換効率が高ければ高いほど、無駄なエネルギーロスが抑えられ、エネルギーを最大限に活用することが可能になりますが、技術的にもコスト的にも、難しい部分があります。
発電効率を高めることが今後の課題と言えるでしょう。
ちなみに身近なところでは、太陽光発電技術を活かしたソーラーバッテリーなども販売されています。災害用に用意したり、環境問題を考えるにあたって、こういうものを活用したりするのも良いのではないでしょうか。