2022.06.12
環境を考える

再生可能エネルギーとは? 種類と今後の展望、活用における課題について説明します

about-renewable-energy

私たちの暮らしに欠かすことのできないエネルギー。エネルギーは電気やガスの元となるため、経済活動や日々の暮らしに不可欠です。

しかし近年、環境保護や安全性の観点から、化石燃料や原子力の活用といったエネルギーの供給手段が見直されつつあります。

そこで今注目を集めているのが、再生可能エネルギー
メディアでも取り上げられることが多いため、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

再生可能エネルギーは、世界的なCO2削減の動きやSDGsの推進に伴って多くの国が活用を進めており、日本でも今後、より注目を集めていくのは間違いありません。

本記事では、「再生可能エネルギーとは何か」から、再生可能エネルギーの種類、活用におけるメリット・デメリット、また今後の展望について紹介します!

そもそも、再生可能エネルギーとは

そもそも、再生可能エネルギーとは何を指すのでしょうか。

経済産業省によると、「太陽光、風力、その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができるもの」と定義されており、具体的な特徴としては以下が挙げられます。

  • エネルギーの元となる資源が枯渇しない
  • 二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスを排出しない
  • 場所を問わず、様々な環境でエネルギー源を調達できる

石油はいつか枯渇すると言われています(ピークオイル説)
また二酸化炭素の排出量は世界全体で増えており、地球温暖化を防ぐために早急な対応が見込まれています。

人間は今や地球上のほぼすべての地域で経済活動を行っているので、生産手段が場所によらないようにするのも大切です。

このような現在議論されている課題をクリアしたエネルギーを、再生可能エネルギーと呼びます。

再生可能エネルギーの始まりは、70年代のオイルショック

 

このように、環境問題の観点から研究と活用が進められている再生可能エネルギーですが、日本の場合、その始まりは環境問題ではなく、なんとオイルショックにありました。

1973年、中東の紛争をきっかけとして石油価格が急上昇。
石油資源の大半を輸入に頼り、またその多くを中東地域に依存していた日本経済にとっては大きな打撃となりました。

一時は大混乱に陥ったものの、無事危機を乗り越えましたが、この事態をきっかけに石油に代わる安定的なエネルギーを模索するようになり、1974年から再生可能エネルギーの研究が始まったのです。

なぜ今このタイミングで、再生可能エネルギーが注目されているの?

 

現在、日本は安定的に石油資源を手に入れることができています。ではなぜ、再生可能エネルギーが注目されているのでしょうか。

その主な原因は、地球温暖化の原因のひとつであるCO2排出量の増加にあります。
石油エネルギーを元とする世界のCO2排出量は年々増加しており、2015年のCOP21で提案されたパリ協定を境に、再生可能エネルギーの使用が加速しました。

日本国内でも2015年7月に発表された「長期エネルギー需給見通し」では、2019年度は15%であった再生可能エネルギーの比率を、2030年度までに22%から24%に引き上げることを目標としており、より積極的な取り組みが求められています。

Googleは、再生可能エネルギーで自社の消費電力をすべて賄っている

 

再生可能エネルギーの推進に積極的なのは国だけではありません。最近では、企業も自発的に再生可能エネルギーを選ぶようになりつつあります。

積極的に取り組みを進める企業に、Googleがあります。Googleは、自社で消費するエネルギーを賄うために、2010年代から再生可能エネルギーへの投資を実施。
2017 年にはグローバル企業として世界で初めて、消費するエネルギーの 100% を再生可能エネルギーにすることを実現しました。

現在Googleは、2030年までに世界中のすべてのデータセンター、クラウドリージョン、キャンパスにおいて 24 時間 365 日 カーボンフリーエネルギー※で運用するという目標を掲げています。

カーボンフリーエネルギー…排出量を単に相殺するのではなく、事業に必要なエネルギー供給から二酸化炭素を完全に排除したエネルギー

再生可能エネルギーには、どんな種類があるの?

では、再生可能エネルギーにはどのような種類があるのでしょうか。
まず「発電」と名のつく、私たちの暮らしに欠かせない電気の発電方法について見てみましょう。

名称

発電方法・特徴

発電量のシェア
(2020年度)

抱える課題

太陽光発電

  • 光電効果を利用

8.9%

  • 導入コスト、管理コストが大きい
  • 生産量が天候に左右される

水力発電

  • 水車を回転させる
  • 水車につながる発電機を
    回転させることで発電

7.8%

  • 初期投資金額が大きい

バイオマス発電

  • 化石燃料を除いた、
    動植物等の生物から作り出される
    有機性のエネルギーがバイオマス
  • バイオマスを燃やし、発電する

3.4%

  • 燃料資源の確保が必要

風力発電

  • 風車の回転運動を
    発電機を通じて電気に変換

0.9%

  • インフラ整備がされていない場所に
    適地が多い

地熱発電

  • 地下にあるマグマから
    発生した蒸気を取り出す
  • 蒸気でタービンを回して発電

0.3%

  • 開発期間が長い
  • 開発コストが高い
  • 掘らないと、利用できるかわからない

次に、「利用」と名のつく、自然現象をうまく利用した方法を見ていきましょう。

名称 発電方法・特徴 どこで利用されている? 抱える課題
太陽熱利用
  • 屋根や屋上、外壁に集熱器を設置
  • 熱で空気や水の温度を上げ、
    暖房用や給湯用に利用する
  • 家庭で使われる給湯や暖房
  • 価格が、家庭用で数十万、
    業務用では数百万円の規模になる
氷雪熱利用
  • 雪や冷たい外気により
    凍結した氷を保存
  • 冷気や溶けた冷水を冷熱源とする
  • ビルの冷房
  • 農作物の冷蔵など
  • 冷熱を確保するための、
    雪氷貯蔵施設が必要
温度差熱利用
(ヒートポンプ)
  • 地下水、河川水、下水などの水源が熱源
  • 外気と水温の温度差を利用
  • オフィスの冷暖房
  • 給湯など
  • 初期コストが高い
  • 地方公共団体との連携も必要
地中熱利用
  • 温度が一定の地中を利用
  • 夏は地中に熱を放熱し、
    冬は地中から熱を採熱する
  • 工場や家庭の空調設備
  • 初期コストが高い
  • 設備費用の回収期間が長い

このように、再生可能エネルギーはひとつではなく、様々な種類があり、それぞれに特徴があるのです。

再生可能エネルギーを使うことのメリットは?

では、再生可能エネルギーを使うメリットは、どのような点にあるのでしょうか?

エネルギー源が枯渇しない

枯渇しないことは法律で定められた再生可能エネルギーの定義でもあります。枯渇する可能性がある場合は、再生可能エネルギーと言えません。

例えば、メジャーな資源である原油や石炭といった化石エネルギーは限りある資源のため、再生可能エネルギーには該当しません。
また非化石エネルギー源に分類される原子力エネルギーも、ウランという有限の物質を必要とするため、こちらも該当しません。

主に、太陽光、水力、風力、バイオマスといった自然由来の無尽蔵とも呼べるエネルギーを元にしているものが、再生可能エネルギーに当てはまります。

二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスを排出しない

石油を使うと二酸化炭素を大量に排出しますが、太陽光・風力・地熱・水力といった再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出しません。
後述のバイオマス発電についても、光合成によりCO2を吸収して成長する資源を燃料としているため、「京都議定書」における取扱上、CO2を排出しないものとして再生可能エネルギーのひとつとなっています。

さらに、これまで発生していた焼却灰などの有害物質や、放射性廃棄物といった廃棄物が生成されないことから、環境負荷が非常に低いのが特長です。

場所を問わず、様々な環境でエネルギー源を調達できる

また供給場所を問わず、場所を選ばないのも大きなポイント。
太陽光や風、水などは日本の至るところで確保できますから、ある地域でしか再生可能エネルギーを使えないということがありません。
日本各地に設備を設けられるということで、一箇所あたりのエネルギー供給エリアを狭めることができます。

供給エリアを狭めることは、万が一自然災害が起きてエネルギーが調達できなくなっても、大きな事故を未然に防ぐことにつながるのです。

エメルギーメーカーとして、雇用を生み出す

再生可能エネルギーの発電業者は、「エネルギーメーカー」として民間の会社の事業となります。
従来の発電所とは違う形での設備投資となり、雇用が創出されるという経済的なメリットもあります。

再生可能エネルギーを使うことのデメリットは?

 

良いことばかりのように見える再生可能エネルギーですが、デメリットはないのでしょうか。

1番のデメリットは、天候の変化といった自然現象により、発電量が左右されることでしょう。
太陽光は雲が現れたら遮られてしまうし、風力も風が止んだら使えなくなってしまいます。

石炭火力や原子力と比べ、依然として発電コストが高いことも問題のひとつ。
設備投資の初期コストがかかるのみならず、発電規模も小さいケースが多いため、価格が高騰しやすい傾向にあります。

さらには設置に適した場所を調べる手間も考えなければいけません。また、適した場所が見つかっても、そこはすでに別の用途で土地を利用している場合も。
例えば、地熱発電に適した場所が見つかっても、温泉街といった観光業が盛んなエリアだったら、設備をそこに作るのは、なかなか難しいものがありますよね。

再生可能エネルギーをビジネスに。固定価格買取制度(改正FIT法)により収益も期待できる

 

再生可能エネルギーの不便さや経済面での不具合に関しては、きちんと向き合っていかなければなりません。

でも、せっかく環境の良いことをしようと再生可能エネルギーを活用しようとしても、デメリットばかり言われてしまっては、導入に二の足を踏んでしまいますよね。
そこで国も、きちんとビジネスとしての収益が見込めるよう後押ししています。

国は、再生可能エネルギーの普及を後押しするために、「固定価格買取制度(改正FIT法)」という制度を設けました。

本制度はその名の通り、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束するもの(期間の制約あり)です。

電気を買ってくれる人が必ずいると、「需要」が見えているなら、再生可能エネルギーを事業として取り組もうという会社も増えてきますよね。
この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進むことが見込まれています。

本制度は2012年から始まったものですが、この制度により、再生可能エネルギー導入のハードルは年々下がっています。

再生可能エネルギー事業に取り組む企業は増えている!

実際に、再生可能エネルギーを事業にしている企業はたくさんあります。

例えば、山形県にある株式会社チェンジ・ザ・ワールド
自社でたくさんの太陽光発電所を施工するのみならず、「ワットストア」というスマホアプリを開発。太陽光発電所をはじめとする発電所を最小単位「1W」から購入でき、スマホから簡単に再生エネルギー発電所のオーナーになれるアプリを提供しています。

さらに東京都にある株式会社レノバでは、マルチ電源への取り組みを強化しています。

マルチ電源とは、地域で発電可能な再生可能エネルギーをできるだけミックスして、電力供給や事業をより安定的にする取り組み。太陽光や風力などの発電量が変動する電源と、バイオマスや地熱、水力などの発電量を安定させることが可能な電源を組み合わせることで、高い収益率を誇るとともに、これからの新しいエネルギー比率を模索しています。

支援制度も充実! 国が設ける様々な支援

制度のみならず、税制や融資といった支援制度も拡充されています。

例えば、省エネ再エネ高度化投資促進税制(再生可能エネルギー部分。令和3年3月31日をもって終了)では、特定の事業者の税制を優遇したり、
再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置(固定資産税)で固定資産税を軽減したりすることで、再生可能エネルギーを導入しやすくしました。
 

融資の面では、「環境・エネルギー対策資金(非化石エネルギー設備関連)」といった融資制度があります。中小企業や個人事業主が、非化石エネルギー設備(再生可能エネルギー設備)を取得(改造、更新を含む)するために必要な設備資金を国が融資することで、導入を後押ししています。

前述の発電コストも低減していく傾向にあり、今後はより再生可能エネルギーの普及が見込まれるため、制度、税制、融資をうまく使うことで、環境によく、収益の見込める事業として再生可能エネルギーは認知されていくのではないでしょうか。

まとめ:再生可能エネルギーで、人と地球に優しい世の中へ

再生可能エネルギーの基礎知識や種類、メリットやデメリット、収益性や今後の展望についてご紹介しました。

世界的に見ても再生可能エネルギーの活用は進んでおり、今後、日本でもますます導入が進んでいくでしょう。
もちろん実用面でのハードルの高さは依然としてありますが、支援制度の充実もさらに見込まれており、再生可能エネルギーでの発電量が増えていくことは確実です。

当たり前すぎて、暮らしの中で意識することはありませんが、先進国で人口も多い日本は、世界的にもエネルギー消費が多く、どのように再生可能エネルギーと向き合っていくのかが世界から注目されています。

限りある資源を分かち合うだけでなく、一人ひとりが地球にも優しい再生可能エネルギーについて考えることが、環境問題への解決につながっていきます。

タイトルとURLをコピーしました