石油、石炭、天然ガスといった化石燃料。これらがどのようにして世の中に広まったかをご存じでしょうか。身近なようで意外と知られていない化石燃料ですが、現在は脱炭素化に伴い、世界中でその活用方法が見直されています。
本記事では、「化石燃料とは何か」といった基礎知識から歴史について。
また種類、活用におけるメリットやデメリット、今後の展望について紹介します。
化石燃料とは
化石燃料は、石炭・石油・天然ガスなどといった資源のことを指します。
これらの化石燃料は、何億年も昔の動植物やプランクトンの死骸が、海底に溜まり分解され、圧力などによって変化することで化石燃料となりますが、人間の技術では再現できるものではない上に、広い地球を見渡しても限りがある資源です。
化石燃料の歴史
石炭は紀元前と古くから既にその存在が知られていましたが、本格的にエネルギーとして活用されるようになったのは、18世紀後半に登場した蒸気機関車の存在が大きいと言われています。
19世紀にはアメリカで石油が発見され、様々な産業に活用されるようになりました。
同じ19世紀に起きたイギリスの産業革命を皮切りに、化石燃料の使用が活発になり、そのなかでも特に、石炭を利用して動く蒸気機関車が発明されたことによって、人間社会の近代化が一気に進むことになります。
石炭よりも使いやすいとされた石油の活用が世界に広まり、人間の生活環境がより発展していくことになります。
また今度は発電機が発明されると、エネルギーとしての利便性が優れていることから、様々な地域や場所で電気が当たり前に使われていくようになりました。
このような流れでエネルギーの利用が世界的に急増したことで、人間社会が発達し、現代に繋がる歴史を刻んできたのです。
化石燃料の種類
化石燃料にはいくつかの種類が挙げられますが、これらの資源はどれも有限であり、近い将来には枯渇すると言われています。
名称 | 成因 | 用途 |
石油 | 水中のプランクトンの死骸などが、土砂と一緒に海などの堆積。 微生物によって有機物に変化し、その上にさらに砂などが積もり、 化学反応が進んで、長期間の地熱によって分解。 液体状になって出来上がるもの。 |
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石炭 | 堆積した植物が地中に埋まり、 長期間の地圧や地熱によって出来上がるもの。 |
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天然ガス | 水中のプランクトンの死骸などが、土砂と一緒に海などの堆積。 微生物によって有機物に変化し、その上にさらに砂などが積もり、 化学反応が進んで、長期間の地熱によって分解。 気体状になって出来上がるもの。 |
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LPガス | 天然ガスと同様に、炭化水素でできており、 動植物が地中に埋まり、 長期間を経て分解・蓄積されて出来上がるもの。 |
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シェールガス | 頁岩という堆積岩に滞留しているガスのことを指し、 プランクトンなどが堆積したものが長期間を変化し ガスになって出来上がるもの。 |
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シェールオイル | 頁岩という堆積岩に滞留している原油のことを指し、 プランクトンなどが堆積したものが 長期間を変化し液体状になって出来上がるもの。 |
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メタンハイドレート | 天然ガスの主成分であるメタンガスが 水分子と結びつくことで出来上がるもの。 |
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オイルサンド | 地下深くで生成した原油が地表付近の貯留層に移動し堆積。 地下水やバクテリアなどによって分解されることで、 軽質の炭化水素成分が消え、 重質化・高粘土化し出来上がるもの。 |
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石炭の特徴
- 可採年数が長い
他の化石燃料と比較しても可採年数が長く、現時点で約150年との予測がされています - 分布している地域が幅広い
アジアや、欧州・ユーラシア、北米といった多くの地域に分散しており、様々な場所で採掘することが可能です。
石油の場合は、限定的な地域からの輸入に頼っているため、供給量や価格が安定しないというデメリットがありますが、石炭の場合はそのような心配がなく、安定した供給が可能です。 - 保管しやすい
石炭は爆発の危険性が低いことから、長期保存に優れており、他の化石燃料と比較しても多くの量を輸入し、在庫として保有しておくことができます。 - 低コスト
石油や天然ガスと比較すると、価格が安定して低いというメリットがあります。そのためエネルギー源として活用しやすいという特徴があります。
石炭には上記のようなメリットがある一方、多くの二酸化炭素や有害物質を排出するというデメリットも持ち合わせています。
地球温暖化が進む現代においては、自然エネルギーと石炭とを上手く組み合わせることが重要になってきます。
石油の特徴
- 運搬しやすい
石油は液体であることから、貯蔵に優れており簡単に運搬できることが特徴です。 - 多くの電力を賄える
石油内航船一隻から、およそ8万軒の1ヶ月分の電力を賄うことができます。
運搬のしやすさに優れている一方、日本では、石油産出国である中東諸国からの輸入にほとんど頼り切っている状況です。
そのため政治情勢により価格の変動が生じやすく、一般家庭にもその影響が波及しがちです。
天然ガスの特徴
- 地球温暖化への影響が少ない
燃焼する際の二酸化炭素の排出量が少ないことから、地球温暖化の原因にもなる温室効果ガスの排出を抑えることができます。 - 環境に優しい
大気汚染や酸性雨の原因になると言われている窒素酸化物の発生量が少ないことから、化石燃料の中でも環境に優しい資源と言われています。 - 運搬しやすい
天然ガスは、マイナス162度まで冷却することで液体になります。そうすることによって体積が気体のままである時と比較して1/600にまで軽くなるため、大量輸送や貯蔵に適していると言われています。
このように化石燃料の中では、環境にも悪影響が少なく、運搬もしやすいことから非常に優れた資源であることが伺えます。
一方で、現在の採掘方法では世界中で地震が発生するリスクが高まると言われており、人為的な過剰採掘が問題にも上がってきています。
化石燃料のメリットや展望
- 輸送や貯蔵が容易
大量輸出に加え、貯蔵にも適しているため、使用時のコストを抑えやすいと言えます。 - エネルギー効率が高い
火力発電を中心に、エネルギーの変換効率が良いことがメリットのひとつと言えます。 - 他のエネルギーと比較し、コストが安い
化石燃料はコストをかけずに、効率よくエネルギーへと変換できます。
化石燃料は有限な資源であるものの、メリットも多く、現代社会を支えているエネルギーであることに違いありません。
まずは、この化石燃料を世界的に安定して供給することが重要な課題になっています。
また昨今では、化石燃料に代わり、再生可能エネルギーの活用が浸透してきています。
これは、太陽光や水力、風力などを利用して発電する方法。温室効果ガスを排出しない上に、化石燃料とは違い国内で生産できることから、資源の乏しい日本では注目を集めています。
今後は、化石燃料を使用しつつ、人間の社会生活へと悪影響を与えない範囲で、徐々に再生可能エネルギーへとシフトしていくことが重要になってくるのではないでしょうか。
化石燃料のデメリットや課題
- いつか枯渇する
現代では、エネルギー消費のほとんどを化石燃料でカバーしており、その消費量は、アジアなどの新興国を中心に今後も消費量が増加していくと言われています。その一方で、非常に長い年月をかけて出来上がった化石燃料は、人間の技術で新たに生み出すことはできません。
技術の進化によって、採掘量は増えているものの、生産量が大幅に上がっているわけではないため、近い将来、枯渇すると予想されています。 - 採掘や使用に伴う環境汚染
化石燃料の採掘時、輸送時、加工時にも種類によっては、メタンや温室効果ガスを排出しており、これらは環境に大きな問題を与えています。
また燃焼時には、酸性雨の原因にもなる硫黄酸化物や窒素酸化物が排出されます。酸性雨が降ることによって、森林破壊や土壌汚染が進み、環境汚染をはじめ生態系も崩れ始めています。 - 二酸化炭素が排出される
前述した通り化石燃料は、何億年も昔の動植物やプランクトンの死骸が化石となり堆積したものです。有機化合物で生成されるそれらを燃焼することで、二酸化炭素が多く排出され、地球に悪影響を及ぼします。
化石燃料は人間社会には欠かせないエネルギーであるのに対し、多くのデメリットも抱えています。
まとめ:見直される化石燃料との上手な付き合い方を
化石燃料の基礎知識や種類、メリット・デメリット、これまでの歴史や今後の展望についてご紹介しました。
環境問題に注目が集まる今、資源が有限である上に、環境に悪影響を及ぼす化石燃料との関わりは少しずつ見直されてきています。
しかし、今まで化石燃料にエネルギーのほとんどを頼ってきた我々人間にとって、明日からすぐに全ての化石燃料を断つということは、現実的には困難です。
どのように化石燃料と向き合っていくか。私たち人間の社会生活と地球の未来を考慮した付き合い方を模索していくことが大切です。