生物資源を用いるバイオマス発電エネルギー。
バイオマス発電には、木くずを燃やす方法や、下水汚泥や生ゴミからバイオガスを発生させ発電する方法など、様々な発電方法があります。
この記事では、「バイオマス発電とは何か」といった基礎知識や種類、メリットやデメリット、今後の展望についてご紹介していきます。
バイオマス発電とは
バイオマスは、生物資源の総称で、動植物から生まれた資源になります。
このバイオマスを用いたバイオマス発電は、生物資源を直接燃焼したり、ガス化することで発電する仕組みになっています。
また、これまでと比べて技術開発が進歩したことによって、さらに多くの生物資源がバイオマス発電に活用できるようになりました。
バイオマス発電の歴史
オイルショックをきっかけに、再生可能エネルギーに注目が集まる
バイオマス発電は1960年代ごろからアメリカで広まり、林産業で発生した廃材を利用して行われていました。
その後、1973年に発生したオイルショックの影響で世界的に石油価格が高騰。経済的な混乱が起きてしまいました。
このオイルショックをきっかけとして、化石燃料に依存した状態が問題視されたことと、地球温暖化問題など様々な懸念点が重なったことで、二酸化炭素の排出削減を目的とした、バイオマス発電を含む再生可能エネルギーが注目されるようになりました。
2000年代以降、バイオマス発電の研究はより盛んに
2000年代以降は、環境意識が他国よりも高いと言われているヨーロッパをはじめ、バイオマス発電がどんどん普及していきました。
このような背景もあり日本では、平成14年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されたのを受け、バイオマス発電の導入が全国各地で進められていきました。
その後、情勢の変化に伴って「バイオマス・ニッポン総合戦略」の改訂や、新たに「バイオマス活用推進基本法」の制定などがあり、本格的に国産バイオ燃料の導入が始まりました。
加えて、バイオマスが「固定価格買取制度」の対象になったことで、安定的な再生可能エネルギーのひとつとして更なる注目を集め、現在に至ります。
バイオマス発電の種類
バイオマス発電には様々な種類があり、経済産業省資源エネルギー庁では、以下の表の通り、「木質系」、「農業・畜産・水産系」、「建築廃材系」、「食品産業系」、「生活系」、「製紙工場系」の6種類に分類されています。
またバイオマス資源の状態によって「乾燥系」、「湿潤系」、「その他」の3種類に分けられています。
木質系 | 農業・畜産・水産系 | 建築廃材系 | |
乾燥系 | 林地残材 製材廃材 |
農業残渣 稲わら・トウモロコシ残渣・もみ殻・ 麦わら・バガス・家畜排泄物(鶏ふん) |
建築廃材 |
食品産業系 | 生活系 | ||
湿潤系 | 食品加工廃棄物 水産加工残渣 |
家畜排泄物 牛豚ふん尿 |
下水汚泥 し尿 厨芥(ちゅうかい)ごみ |
製紙工場系 | |||
その他 | 黒駅・廃材 セルソース(古紙) |
糖・澱粉 甘藷 菜種 バーム油(やし) |
産業食用油 |
バイオマス発電の仕組み:直接燃焼方式
直接燃焼方式では、木材や木屑などを直接ボイラーで燃焼させることで水を沸騰させて、水蒸気でタービンを回して発電します。
火力発電と似ている発電方法にはなりますが、この方式の場合、作り出せる温度が低いことから、小さい設備では非常に効率が悪くなってしまいます。
大型の設備を導入すれば効率が上がりますが、そうなると大量の木材を安定して調達する必要があるため、品質の確保や、運搬といった条件が厳しくなるというデメリットも抱えています。
バイオマス発電の仕組み:熱分解ガス化方式
熱分解ガス化方式では、木材や木屑などを蒸し焼きにした際に発声するガス燃料に、タービンを回し発電します。このように熱処理することで、炭ができ、この際に木材から可燃性の熱分解ガスが発生し、これを発電に用いています。
この方式は燃焼温度が比較的高く、燃料の可燃成分を最大限活用できることから、規模の小さい発電所でも効率よく発電でき、コスト面でも適しています。
バイオマス発電の仕組み:生物化学的ガス方式
下水汚泥や糞尿などを発酵させ、バイオガスを発生させ、そのガスを燃料にタービンを回し発電します。
この方式の場合、燃えにくいバイオマスを活用できる上に、廃棄物の有効利用にもなり非常に便利です。
それに加えて、ガスの発熱量も高く、発電の効率も良いといったメリットを持ち合わせています。
バイオマス発電のメリット
環境にやさしい
資源を燃焼する際に、二酸化炭素を排出しますが、木材は成長する際に光合成によって二酸化炭素を吸収しています。そのため実質の排出量は0になります。
エコにつながる
バイオマス発電では、通常は廃棄物になるものを資源として活用するため、循環型社会の実現に向けて一役買っています。
このように大きなメリットを持っているバイオマス発電ですが、日本での普及率は2020年の時点で3.2%と非常に低い状態です。
また、第5次エネルギー基本計画の中において、2030年度までにバイオマス発電割合を3.7〜4.6%に設定していましたが、第6次エネルギー基本計画策定に向け改めて見直しされたことによって、目標が引き上げられる可能性があります。
一方で、一般社団法人バイオマス発電事業者協会によると、一般木質・農作物残さの分野における設備導入容量は増える見通しとなってます。
一般木質・農作の残渣(ざんさ:不用物のこと)の分野における設備導入容量
西暦 | 導入容量 |
2021年 | 198万kW |
2025年 | 411万kW |
2028年 | 455万kW |
2030年 | 484万kW |
今後、バイオマスが自立した電源になるように2030年度にはガス火力発電と同等の売電価格にする方針も固まっています。
バイオマス発電のデメリット
普及が遅れている
資源の確保や管理、設備の設置にかかるコストが高止まりしている上に、事業化に向けた課題が明確化されていないことからコスト面の課題が大きく、普及がなかなか進まない原因のひとつとなっています。
燃料の確保が課題になっている
日本は森林が多く木材自体には恵まれているものの、森林・林業基本計画によって、伐採できる量が決められています。
そのため結局原料を輸入に頼ることになってしまい、国内で賄えている量は全体の3割しかありません。このような現状の中で、バイオマス発電を拡大させるために、国内の原料を安定して確保することが課題になっています。
バイオマスは有機物であることから、燃焼させると二酸化炭素が発生します。しかしそれまでの成長過程において、光合成で大気中の炭素を吸収していたため、結果的に二酸化炭素の排出はゼロとみなされていますが、この見方が近年変わってきています。
EUではバイオマス発電を燃焼過程の二酸化炭素の排出により再生可能エネルギーのカテゴリに入れない、または厳格化するという報道もあります。
まとめ:日本でも、普及が見込まれているバイオマス発電
今回はバイオマス発電の基礎知識や種類、メリットやデメリット、収益性や今後の展望についてのご紹介しました。
EUではバイオマス発電を再生可能エネルギーのカテゴリに入れなかったり、厳格化するという動きが見られますが、日本では今後、バイオマス発電の設備導入容量は増える見通しが立てられています。
多様な再生可能エネルギーのひとつとして、バイオマス発電が家庭に普及する日もそう遠くはないでしょう。